村上春樹の短編小説『ハナレイ・ベイ』の映画化
公開日
2018年10月公開。監督、脚本 松永大司
出演者
吉田羊、佐野玲於、佐藤魁、村上虹郎、栗原類など。
あらすじ
サチ(吉田羊)の息子タカシ(佐野玲於)は、ハワイのカウアイ島ハナレイ・ベイで一人でサーフィンをしているときに、サメに襲われて19歳で亡くなった。
日本領事館から突然連絡を受けたサチはすぐに一人でハナレイ・ベイに向かい、遺体安置者で息子を確認する。
サチは担当の警官と話し、遺体を火葬にして灰を持って帰ることを決める。警官はサチに夫や他の子供がいるか尋ねるが、サチの夫はずっと前に亡くなり、タカシは一人っ子だったことを告げると、警官はため息をつく。そして、大変気の毒に思うが、この島を恨んだり、憎んだりしてほしくないとサチに言った。
翌日、サチはタカシが宿泊していたホテルに向かい、その後ハナレイの地でコテージを借りて、1週間滞在した。
それ以来毎年、サチはタカシの命日近くになると、ハナレイを訪れ、三週間ばかり滞在することになり、10年が過ぎていった。
サチが例年のようにハナレイを訪れていたとき、日本からサーフィンをしにきた若者の二人に出会った。車に乗せたことからサチと若者二人の交流が始まる。
見どころ(ネタバレあり)
『ハナレイ・ベイ』は村上春樹の短編集『東京奇譚集』に収められた一遍で、私は先に小説を読んでから映画を見ました。
映画化ということで長くしなければいけないのか、小説にはない主人公サチの心の中の葛藤シーン(木を倒そうとするシーン)や無駄にストーリーを付け足した部分(警官の奥さんとのやりとり)などがあり、間延び感が否めない感じもしました。
小説は40ページほどしかなく、映画よりもっと淡々とテンポよく進む感じです。
この映画のレビューなどを読んで私も同感したのは、「吉田羊の英語の発音がきれい。でも、ピアノがプロ並みのピアニストにしてはいまいちな感じ」でしょうか。ピアノのシーンは吹き替えでもよかったのでは?
また、若い頃のサチ、初めてハナレイ・ベイを訪れたときのサチ、10年後のサチとかなり年数が経っているにもかかわらず、全く変化のない吉田羊の外見。
たしかに、若作りさせたりすると、コントみたいになっちゃう映画もありますが、少しぐらい変化をつけないと、いつの時の話かわかりませんからね。
サチの旦那役は20代の栗原類なのに、40代そのままの吉田羊で、それもちょっとどうなんでしょうね。ただ吉田羊の演技は素晴らしいですね。文句ないです。
次に日本人の若者二人。能天気な英語話せないお気楽サーファーなのに、村上虹郎の留学経験あり(インター育ち?)のプライドが許せなかったのか、最後にわざわざ英語発音で「実は英語話せるんです」という落ちが原作を台無しにしてました。
この部分は原作にはなく、能天気なお気楽日本人が、外国慣れしたおばさんとの交流が肝の部分なのに、最後に変なプライド出しちゃっているなと思いました。監督の意向でしょうかね?だったら、最初から英語全く話せないような俳優選べばよかったのに。
もう一人の若者はプロサーファーの佐藤魁ということですが、素人ぽくていい感じでした。村上虹郎はいかにも演技してるって感じで、私はかえって佐藤魁の方が原作のイメージだと思いました。
それ以外は無難に原作を映画化している感じですね。ハワイのビーチもきれいです。
村上作品は、ストーリーが次々展開していくわけではないので映画化だと間延びした感じになるんですかね。1時間ぐらいに凝縮させて、作品を忠実に映像化させるともっといい感じだったかも?と思いました。私の場合、原作に思い入れが強いため辛口になりました。
現在『ハナレイ・ベイ』は現在U-Nextで配信中です。
※2021年9月時点の情報です。現在は配信終了している場合もありますので、詳細はU Nextの公式ホームページにてご確認ください。