村上春樹の短編小説『ドライブ・マイ・カー』の映画化
公開日
2021年8月公開。監督 濱口竜介、脚本 濱口竜介、大江崇允、原作 村上春樹
出演者
西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアンなど。
あらすじ
家福悠介(西島秀俊)は俳優で、妻の音(霧島れいか)はかつて女優だったが今は脚本家に転身して成功している。
家福は車を運転するときには、よくセリフの練習をした。妻の音が相手役のセリフをテープに吹き込み、それに合わせて家福はセリフを覚えた。
ある日、家福はロシアの国際演劇祭に行くために空港へ向かったが、その直前に主催者から天候のため延期になったと連絡が来る。
家福は仕方なく家に戻ると、音は他の男とセックスをしている最中だった。家福は何も言わず、音に気付かれる前にそのまま家を出て、ロシアに滞在していることを装いホテルに宿泊した。その後、家福は家に戻り、夫婦は何事もなかったかのように、日々を過ごしていく。
その後のある日、家福が仕事を終えて帰宅すると、音が居間で倒れていた。そしてそのまま音は亡くなってしまった。
2年が過ぎ、広島演劇祭で、家福は『ワーニャ伯父さん』を演出することになった。広島でも自分の愛車で移動しようと思っていたところ、事務局がドライバーを用意しているという。最初はあまり乗り気でなかったが、事務局の説得で女性ドライバーのみさき(三浦透子)を紹介された。
みさきは無愛想だが運転の腕は確かで、何も共通点もない運転手と俳優という二人が、徐々にお互いに心を開き始める。
見どころ(ほとんど批判+ネタバレあり)
『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収められた一遍。
好きな作家の1人なので、もちろん『ドライブ・マイ・カー』は先に小説の方を読んでいました。
ラジオ番組か何かで村上春樹は「作品が他人の手に渡ったら、もう勝手に自由自在にお使いください」と言っていたので、私が文句を言うことではないのですが、村上作品好きの私として、この作品を見た感想は「うーん?」という感じでした。
映画は約3時間。長すぎます。家福が車でセリフを練習する場面がよく出てくるのですが、棒読みで延々と続くので、かったるかったです。音のセリフも棒読みでゆっくり。俳優はこうやってセリフを練習してるのですかね。
映画館で見ていたら明らかに寝てたかな。そして、家福の私生活+舞台の話『ワーニャ伯父さん』のが話が盛り込んであるので、長くなっています。舞台の話をそこまで割り込ませなくてもよかったのでは?と原作を読んでいる立場からすると思いました。
ただ、この舞台の場面は製作者側として多様性をぶち込んで、海外賞レースに食い込むには必須だったんでしょうね。
色んな国々の俳優が自分の言語でセリフを言って、字幕が流れるという舞台。現実性を感じないし、テンポが悪いんですよね。この辺は見ていて退屈でした。
俳優が多国籍のため、英語で話さざるを得ない場面もあり、賞狙いを意識していたということも垣間見えて、ちょっとげんなりしてしまいました。
実際この作品は製作者側の狙い通り、数々の海外の賞を獲得して満足だとは思いますが、ここまで原作から内容を変えるなんて、原作好きの私としては正直がっかりでした。
話の内容はちょっとずつ変えてあって、他の村上作品を継ぎはぎした感じで、それがわかっている者にとっては何とも言えない気持ちになります。家福は自宅で妻が他の男と寝ている場所に遭遇したことはない(短編『木野』でその場面あり)。なぜか音がシェエラザード(短編『シェエラザード』から)の話を始める。家福の子供は生まれてすぐに死亡だったのに、幼児期に死亡に変更。高槻が良い感じの40代男性から、独身のくず男に変更。音はガンで死亡なのに急死に変更。ミサキの母親が多重人格の記述はなしなど。
そして、俳優も素人ぽい感じするのは何なんでしょう。まず音役の霧島れいかですが、容姿は原作の音を体現しているのですが、演技が素人ぽくて、この映画から家福が音のどこに魅力を感じていたのかよくわからないです。広島で出てくる舞台の取り仕切り役の男女2人や日本人の舞台俳優たちも素人ぽい感じがしましたね。
この作品の良さをあげるとしたら、西島秀俊と音楽やドライブ場面ですかね。『ドライブ・マイ・カー』というタイトルだけあって、ドライブシーンも多いです。三浦透子と岡田将生も悪くないです。岡田将生はくず男をよく演じてますよね。
この作品に比べれば、村上作品をもう少し忠実に撮ってある『ハナレイ・ベイ』『ノルウェイの森』『トニー滝谷』の方がよかったかな。
この賞狙いの作品を評価するハリウッドやカンヌもどうなんでしょうね?本当にこれが良いって思ってるんですかね。
原作のストーリーの映画化が見たかったので、私としてはちょっとがっかりしました。
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